法華経 現代語訳 69

その時に世尊は、再びこの内容を語ろうと、詩偈の形をもって次のように語られた。
「この人は鼻が清らかであり この世にあって 香ばしい香りや臭い臭いなどを すべて嗅ぎ分けることができるであろう

(注:法華経を保つ者は、あらゆる器官が優れた能力を持つようになることが、非常に長く、そして詳しく具体的に述べられている箇所が続く。実際、このような能力が、この世にあって与えられたならば、かえって煩わしいのではないか、と思われても不思議ではない。しかし、まずこれらは、この世にあって与えられることは確かであっても、対象はほとんど、目に見えない霊的世界である。さらに、このような能力が、一度に一人の人に与えられるのではなく、この中の一部が、それぞれの人の能力や個性や性格に従って与えられる、と考えるべきである。霊的目が開かれるならば、確かにここに記されている多くの事柄の中の一つや二つは、体験するようになるものである。訳者である私も、良い霊的存在から薫る香りや、悪しき存在から出される臭い臭いは嗅ぎ分けることができる。)

須曼那闍提(しゅまんなしゃだい) 多摩羅栴檀(たまらせんだい) 沈水(ちんすい)および桂(かつら)の香 あらゆる花や果実の香 および衆生の香 男子や女人の香を知るであろう 
説法者は遠くにあっても 香によってその所在を知るであろう 力ある転輪聖王や小転輪およびその子 群臣や多くの宮人たちの香によってその所在を知るであろう 彼らの身に着けている珍宝 および地中にある宝蔵 転輪聖王の宝女などの香によってその所在を知るであろう 多くの者の身の装飾品や衣服および瓔珞や あらゆる塗られた香など 嗅いでその者が誰であるかを知るであろう 多くの天的存在が 進んだり座ったり または遊戯または神変する様子を この法華経を保つ者は その香を嗅いですべて正しく知るであろう
多くの花や果実 および蘇油(そゆ・宗教的儀式に使用する油)の香気などを この経を保つ者はこの世にあって すべてその所在を知るであろう 多くの山の深く険しい場所にある 栴檀樹(せんだんじゅ)の花が開くあり様を 衆生の中にありながら その香を嗅いで正しく知るであろう
鉄囲山(てっちせん・この世の最も外側にあるとされる山)や大海や地中の多くの衆生も この経典を保つ者はその香を嗅いで すべて正しくその所在を知るであろう
阿修羅の男女 およびその多くの従者たちが 闘争し遊戯する時の香を嗅いで すべて正しく知るであろう 荒野の険しい場所で 師子や象や虎や狼 野牛や水牛などの香を嗅いで所在を知るであろう 
もし懐妊した者がいたとして その子が男であるか女であるか または生きているが死んでいるかなども その香を嗅いで正しく知るであろう その香を嗅ぐ力をもって 初めて懐妊して 無事生まれるか生まれないか 楽に産めるかどうかも知るであろう 香を嗅ぐ力をもって 男女の所念 欲望や怒りの心を知り また善を行なう者を知るであろう 
地中に埋められた宝 金銀などの珍宝 銅器などがある所 その香を嗅いで正しく知るであろう あらゆる瓔珞の価値がわからない状態であっても その香を嗅いで その価値があるかないか どこで作られたのか およびその所在を知るであろう
天上の多くの花である曼陀曼殊沙(まんだまんじゅしゃ)や 波利質多樹(はりしったじゅ)の香を嗅いですべて正しく知るであろう 天上の多くの宮殿の 上中下の違いや 多くの宝の花が厳かに飾られている香を嗅いで すべて正しく知るであろう 天の園林や優れた宮殿 多くの高殿や妙法堂 またその中にあって娯楽する その香を嗅いですべて正しく知るであろう 多くの天的存在たちが 教えを聞いたり 五欲を受けたりする時 または行住坐臥する時の香を嗅いで すべて正しく知るであろう 天女が着ている衣が 良い花の香をもって厳かに飾られ 飛び回って遊戯する時の香を嗅いで すべて正しく知るであろう
このように順次昇って 梵天に至るまでの禅定に入った者出た者の香を嗅いで すべて正しく知るであろう 光や音が遍く清らかな天から 天の最も高い天に至るまでの 初めて天に生まれた者や 再び人間界に落ちてしまう者などの香を嗅いで すべて正しく知るであろう
多くの僧侶たちが 教えにおいて常に精進し 立ったり歩いたり および経典の教えを読誦し あるいは林樹の下にあって 座禅に専念したりする香を 法華経を保つ者は嗅いで すべてその所在を知るであろう
菩薩の志が堅固であり 坐禅したり経典を読んだり あるいは人に説法する香を嗅いで すべて正しく知るであろう
あらゆる方角の世尊が すべての人々に敬われ 人々を憐れんで説法する香を嗅いで すべて正しく知るであろう 衆生が仏の前にあって 経典を聞いてみな喜び 教えの通りに修行する香を嗅いで すべて正しく知るであろう
この法華経を保つ者は 菩薩の煩悩を断ち切った鼻を得ていなくても まずその鼻の形を得るであろう

つづく

 

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