法華経 現代語訳 78

妙法蓮華経 妙音菩薩品 第二十四

その時に釈迦牟尼仏は、大いなる肉髻(にくけい・仏の頭部の盛り上がったところ)から光明を放ち、および眉間にある白毫(びゃくごう・仏の眉間にある毛の渦)から光を放って、東方にある、大河の砂を百八万億倍してさらに一千億倍した数の諸仏の世界を広く照らされた。それほどの数の仏国土を過ぎたところに浄光荘厳(じょうこうしょうごん)と名づけられる世界があった。
その国に仏がおられて、その名を浄華宿王智(じょうけしゅくおう)如来という。無量無辺の数の菩薩の大衆から敬われ、囲まれて、彼らのために教えを説いていた。釈迦牟尼仏の白毫の光明は、広くその国を照らされた。
その時に、一切浄光荘厳国(いっさいじょうこうしょうごんこく)と名付けられた国の中にひとりの菩薩がいた。その名を妙音(みょうおん)という。長い間、徳を積んで、無量百千万億の諸仏を供養し、親しく仏に近づき、非常に深い智恵を成就し、十六種類のすぐれた三昧を得た。(注:ここに、十六種類の瞑想の名前があるが、すべてその名称だけで内容の説明は記されていないので、煩雑を避けて記さない。その中に、有名な法華三昧の名もある。ちなみに、法華三昧の原語は、この経典の名そのものである)。このように、大河の砂を百千万億倍した数の多くの大いなる三昧(=瞑想)を得た。
そして、釈迦牟尼仏の光が、その妙音菩薩の身を照らした時、妙音菩薩は浄華宿王智仏に次のように言った。
「世尊よ。私は娑婆世界に行き、釈迦牟尼仏を礼拝し、親しく近づき、供養し、さらに教えの王子である文殊菩薩、薬王菩薩、勇施(ゆせ)菩薩、宿王華菩薩、上行意(じょうぎょうい)菩薩、荘厳王(しょうごんおう)菩薩、薬上(やくじょう)菩薩に会おうと思います。」
その時に浄華宿王智仏は、妙音菩薩に次のように語られた。
「あなたはその国を蔑み、下劣の思いを生じさせることのないようにせよ。良き男子よ。その娑婆世界は、高低があり、土や石があり、多くの山があり、汚れや悪が充満している。仏の身は小さく、菩薩たちも小さい。しかしあなたの身は、四万二千由旬(ゆじゅん・非常に高いという意味の単位)、私の身は六百八十万由旬である。あなたの身は何よりも美しく、百千万の福があり、妙なる光明に満ちている。そのために、その国に行ってその国の状態を軽んじ、仏、菩薩、およびその国土に対して、下劣の思いを生じさせることのないようにせよ。」
妙音菩薩は、仏に次のように申し上げた。
「世尊よ。私が今、娑婆世界に礼拝するために行くことは、すべて如来の力、如来の神通力であり、あらゆる世界に行くことのできる力であり、如来の功徳と智恵の厳かな表われに他なりません。」

(注:もし、妙音菩薩が自分の力で娑婆世界に行くのなら、娑婆世界のあらゆる事柄と自分を比較する思いが生じるだろう。しかし、妙音菩薩には自分というものがなく、霊的にすべて如来とひとつになっている。彼の身の優れた美しさも、それゆえのものである。まさに妙音菩薩は、霊的に歩もうとする者の模範である。)

そして妙音菩薩は、その座を立たず、身を動かさずに瞑想に入り、その瞑想の力によって、法華経の説かれている耆闍崛山(ぎじゃくせん)の教えの座から遠くない場所に、八万四千のあらゆる宝の蓮華を作った。妙なる金を茎とし、白銀を葉とし、金剛を毛とし、赤い色の宝をもってその台とした。
その時に文殊菩薩は、それらの蓮華を見て、仏に次のように申し上げた。
「世尊よ。何の因縁によって、この不思議なしるしが現われたのでしょうか。約千万の蓮華が現われ、妙なる金を茎とし、白銀を葉とし、金剛を毛とし、赤い色の宝をその台としています。」
その時に釈迦牟尼仏は、文殊師利に次のように語られた。
「これは大いなる妙音菩薩が、浄華宿王智仏の国より八万四千の菩薩を従えて、この娑婆世界に来て、私を供養し、親しく近づき、礼拝しようと願い、また法華経を供養し、聞くことを願ってのことである。」
文殊菩薩は、仏に次のように申し上げた。
「世尊よ。この菩薩は、どのような良き因縁を備え、どのような功徳を修して、このような大いなる神通力があるのでしょうか。どのような瞑想を行じるのでしょうか。願わくば私たちのために、この瞑想の名を説いてください。私たちもまたそれを勤めて修行したいと願います。その瞑想を行じて、この菩薩の姿の大小、その立ち居振る舞いを見たいと願います。願わくば世尊よ。神通力をもってその菩薩が来られたならば、私がそれを見ることができるようにさせてください。」
その時に釈迦牟尼仏は、文殊師利に次のように語られた。
「ここにおられる、遠い昔に滅度された多宝如来が、まさにあなたのために、その姿を見せられるであろう。」
その時に多宝仏は、その菩薩に次のように語られた。
「良き男子よ来れ。文殊菩薩があなたの身を見たいと願っている。」
その時に妙音菩薩は、その国において姿を消し、八万四千の菩薩と共に出発した。その通過して経た多くの国は六通りに震動して、みな七宝の蓮華が雨のように降り、百千の天の音楽が演奏されることなしに、自然と鳴り響いた。
この菩薩の目は、広大な青蓮華の葉のようである。たとい百千万の月を合わせても、その顔の美しさには及ばない。その身は真の金色であり、無量百千の功徳で厳かに飾られている。その威徳は絶大であり、その光明は輝き、あらゆる良い姿が備わっており、引き締まった身体をしていた。七宝の台に乗って、非常に高く虚空に上り、多くの菩薩たちを従えて、この娑婆世界の耆闍崛山に礼拝するために来た。

 

つづく

 

法華経 #仏教 #法華経現代語訳