法華経 現代語訳 85

こうして妙荘厳王は群臣や従者と共に、浄徳夫人は宮に仕える女官や従者と共に、王の二人の子は四万二千人と共に、仏のところにいった。そして頭面を仏の足につけて礼拝し、仏の周りを三周して、その片隅に座った。
その時に仏は、王のために教えを説き、その心を奮い立たせた。王は大いに喜んだ。
その時に妙荘厳王とその夫人は、大変高価な首飾りの真珠を解いて、仏の上に注いだ。それらは虚空の中において、四つの柱がある宝の台となった。その台の中に大宝の床があり、百千万の天の衣が敷かれていた。その上に仏が結跏趺坐して大光明を放たれた。
その時に妙荘厳王は次のように思った。
『仏の身は非常に尊く、その尊厳と美しさは際立っている。最も妙なるお姿を成就されている。』
その時に雲雷音宿王華智仏は、僧侶や尼僧や男女の在家信者に、次のように語られた。
『あなたたちはこの妙荘厳王が私の前において、合掌して立っている姿を見ているか。この王は、私のもとで僧侶となり、仏の道を進む菩薩の教えを精進し、まさに仏となるであろう。その名を娑羅樹王(しゃらじゅおう)という。その国を大光と名づけ、劫を大高王と名づける。その娑羅樹王仏には、無量の菩薩たちや声聞たちがいて、その国はすべて平らである。その仏国土にはこのような功徳があるのだ。』
(注:ここでも授記の記事があるが、今までの授記の対象者は、長い間仏に仕える者であったり、あるいは長い間、仏の教えを受けていた大衆に対してであったりした。そしてまた、ある者は他の悟りで満足しており、ある者は仏と同じ悟りなど悟れない、と思っていたりなどしていた。しかし、仏は釈迦如来ではないが、この箇所の特徴は、初めて仏の前に来た王であっても、その場で仏になるという授記を得られる、ということである。そして、その王を仏の前に導いたのが、二人の子供であった、ということなのである。)
その王は、即時に国を弟に譲り、王と夫人と二人の子、ならびに多くの従者と共に、その仏のもと出家して道を修した。王は出家して、八万四千年において、常に勤めて精進して妙法蓮華経を修行した。この後、一切浄功徳荘厳三昧と名付けられる瞑想を得た。(注:ここまで、さまざまな瞑想=三昧の名が出て来たが、そもそも瞑想は霊の次元における宗教的体験であるため、その内容は説明するべきものでもなく、説明されるものでもない。一応、名がつけられているが、その内容を知らねばならないということはない。)
王はその三昧の中で、非常に高く虚空に昇り、仏に次のように申し上げた。
『世尊、この私の二人の子は、仏の道を行なう中で、神通力による変化をもって、私の誤った心を転じて仏の教えを受け入れるようにさせ、世尊にお会いすることができました。この二人の子は、私にとって良き導き手です。前世までの良い因縁を発揮して、私を導くために、私の家に生まれてくれました。』
その時に雲雷音宿王華智仏は、妙荘厳王に次のように語られた。
『その通りだ。その通りだ。あなたが言った通りだ。もし良き男子や良き女人が、良い因縁を積むならば、何度生まれ変わっても、その時その時に良い導き手に会うのだ。その導き手は、仏の道を進ませ、心を奮い立たせて、最高の悟りに入らせるのだ。大王よ。まさに知るべきである。良い導き手はすばらしい因縁の結果である。教化して導き、仏に会わせ、最高の悟りを求める心を起こさせるのだ。大王よ。あなたの二人の子を見ているか。この二人の子は、すでにかつて大河の砂を六十五百千万億倍し、さらに一千億倍した数の諸仏を供養し、親しく近づき敬い、諸仏のところにおいて法華経を受け保ち、誤った考えの衆生を憐れみ、正しい教えに立たせたのだ。』
妙荘厳王は、即座に虚空の中から下りて、仏に次のように申し上げた。
『世尊よ。如来は非常に尊いお方です。その功徳と智慧をもって、肉髻の光明は照り輝いています。その眼は長く広く、紺青の色をしています。眉間の白毫の白いことは満月のようです。その歯は白く、整然と並んでおり常に光明があります。唇の色は素晴らしい赤い色で果実のようです。』
その時に妙荘厳王は、このような仏の無量百千万億の功徳を讃歎し終わって、如来の前において一心に合掌して、また仏に次のように申し上げた。
『世尊よ。このようなことは今までにありませんでした。如来の教えは、不思議であり、妙なる功徳をすべて成就しています。教えや戒めを行なう時、心は心地よく平安となります。私は今日より、自らの心の赴くままには従わず、誤った見解や高慢な心や、怒りやあらゆる悪しき心を生じさせません。』
この言葉を説き終わって、仏を礼拝して出て行った。」
(注:話が長いので、つい混同してしまうのだが、ここまでが、釈迦如来が語った昔の話である。ここからは、今、法華経を説いている場における言葉となる。)
仏は、大衆に次のように語られた。
「あなたたちはどのように思うか。妙荘厳王は、他の誰でもない。今の華徳菩薩である。その浄徳夫人は、今、仏の前にいる光照荘厳相(こうしょうそうごんそう)菩薩である。この菩薩は、妙荘厳王および多くの従者を憐れんで、彼の時代に生まれたのである。そしてその二人の子は、今の薬王菩薩と薬上菩薩である。この薬王菩薩と薬上菩薩は、このような大いなる功徳を成就して、無量百千万億の諸仏のもとで、多くの功徳の因縁を積んで、思いも及ばない多くの良き功徳を成就した。もしある人が、この二人の菩薩の名を知るならば、すべての天と人から敬われるであろう。」
仏がこの『妙荘厳王本事品』を説かれた時、八万四千人が汚れを離れ、あらゆる存在の中において、清らかな悟りの眼を得た。

 

つづく

 

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