仏頂尊勝陀羅尼経 その3

仏は帝釈天に次のように語られた。
「私はこの陀羅尼を説いて、あなたに付嘱(ふぞく・師から弟子へと教えを委ねること)する。あなたはまさに、善住天子に授与すべきである。またあなた自身もまさに受け保ち読誦し教え、この陀羅尼について考え、愛し願い、心に思い供養し、この人間世界のすべての衆生のために、広く述べ伝えるべきである。またすべての諸天子のために、この陀羅尼を、仏の印形を通して表わしあなたに付嘱す。
帝釈天よ。あなたはまによく保ち守護して、忘れ失うことのないようにせよ。
帝釈天よ。千劫の昔より今まで悪業重障を積んで来たため、あらゆる生まれ変わりを繰り返し、地獄、餓鬼、畜生、さらに閻魔王に支配される阿修羅の身、夜叉(やしゃ・森林にすむ鬼神)、羅刹(らせつ・悪鬼)、鬼神、布単那(ふだんな・妖怪)、迦咤布単那(かたふだんな・鬼の一種)、阿波娑摩羅(あばさまら・病気の鬼)、蚊、虻、亀、犬、蟒蛇(うわばみ・巨大な蛇)、あらゆる種類の鳥、およびあらゆる猛獣、あらゆるすべての蠢(うごめ)く生き物、さらに蟻の身を受けるべきところ、もし人が少しでもこの陀羅尼を聞くことができたなら、それらの身をそれ以上受けず、生まれ変わって諸仏如来、および仏の一歩手前の段階にある菩薩と同じ世界に生まれることができ、あるいは、身分の高い婆羅門(ばらもん)階級の家に生まれることができ、あるいは、王族階級の家に生まれることができ、あるいは豪族や高貴な家柄に生まれることができるであろう。
帝釈天よ。この人がこのような良いところに生まれることができるのは、みなこの陀羅尼を聞いたからであり、生まれ変わるところはみな清らかなのである。
帝釈天よ。また悟りのための段階として、最も良いところに生まれることができるのは、みなこの陀羅尼を讃美したからである。この陀羅尼の功徳はこのようなものである。
帝釈天よ。この陀羅尼を吉祥(きっしょう)と名付ける。すべての悪道を清めることができるのである。この仏頂尊勝陀羅尼は、非常に高価な宝が美しく傷や汚れがなく、虚空のように清らかで、その光に照らされないところがないようなものである。もしさまざまな衆生がこの陀羅尼を保てば、その者もこの宝石のようである。また、非常に高価な金が美しく柔らかであり、人を喜ばせ、汚れが付かないようなものである。
帝釈天よ。もし衆生がこの陀羅尼を保てば、その者もこの金のようである。この陀羅尼の偉大な清らかさによって、良い世界に生まれることができるであろう。
帝釈天よ。この陀羅尼がある世界で、この陀羅尼が書写流通し、ある人が受け保ち、聞いて供養するならば、このような人が生まれ変わって経る世界における悪道は、みな清らかな世界となる。すべての地獄の苦しみは、みな消滅するであろう」。
仏は帝釈天に次のように語られた。
「ある人がいて、この陀羅尼を書写し、高い旗の上につけ、あるいは高い山に安置し、あるいは楼閣の上に安置し、さらに仏塔の中に安置したとする。帝釈天よ。そこに僧侶や尼僧や男女の在家信者や一般の男女が来て、旗の上にあるその陀羅尼を見たり、あるいは旗に近づいて、その影がその者たちの身に映ったり、あるいは風がその陀羅尼と旗に吹いて、そこで舞い上がった塵が、その者たちの身に落ちたとする。帝釈天よ。そのような者たちの過去の悪業によって、たとえ地獄、畜生、閻魔王に支配される世界、餓鬼、阿修羅の世界に堕ちたとしても、その世界の苦しみは全く受けることなく、また汚されないであろう。帝釈天よ。このような衆生は、すべての諸仏によって仏となる約束が与えられるようになり、みな、最高の悟りへ向かって退くことがなくなるであろう。帝釈天よ。ましてや、さらに多くのあらゆる供養の品々、花の飾り、飾られた旗や幕など、そして衣服や瑠璃(るり)をもって厳かに飾り、町の四つの辻に仏塔を建ててこの陀羅尼を安置し、合掌して敬い供養し、その周りをまわって帰依し礼拝する者はなおさらである。帝釈天よ。このような供養をする人を、悟りを求める偉大な人と名付けるのである。まさにこの人こそ、仏の子であり、教えを保つ人の筆頭である。またこの人が建てた仏塔こそ、如来の全身の舎利(しゃり・仏の骨)が安置された仏塔と等しいのである」。
そしてその夜、閻魔王が仏のところに来た。そしてあらゆる天の衣、妙なる花、塗香をもって厳かに飾った。こうして仏を供養して、仏の周りを七周回って、仏の足に頭をつけて礼拝し、次のように言った。「私は如来の大いなる力である陀羅尼について説かれ、褒めたたえる教えを聞きました。私は常にこの陀羅尼を守護し、この陀羅尼を保つ者を地獄に落とすことはしません。その者が如来の教えを保っているので、お守りいたしましょう」。

(注:ここまでの箇所では、この『仏頂尊勝陀羅尼』を少しでも聞く者は、生まれ変わっても悪い世界には堕ちない、ということが繰り返されてきたが、この箇所の最後の部分では、ついに閻魔大王まで登場し、この陀羅尼を保つ者は地獄に落とさない、と誓っているのである。これ以上、確実な約束はないであろう。)

 

つづく

 

仏頂尊勝陀羅尼