大乗経典と論書の現代語訳と解説

経論を通して霊的真理を知る

仏頂尊勝陀羅尼経 その4(完)

その時、世を護る大いなる四天王は、仏の周りを三周回ってから、仏に次のように申し上げた。「世尊よ。ただ願わくは如来よ。私たちに陀羅尼を保つ教えを説いてください。」
その時、仏は四天王に次のように語られた。
「あなたは今、よく聞くがよい。私はあなたたちに、この陀羅尼を保つ教えを説こう。また、特に余命いくばくもない衆生のためにも説こう。
まさにまず、洗浴して新しいきれいな衣を着て、白月(びゃくげつ・月の前半の15日間のこと)の満月の十五日に、身を清らかに保ってこの陀羅尼を唱えるべきである。それを千回繰り返せば、余命いくばくもない衆生の寿命を延ばすことができ、長く病苦を離れ、過去から積んで来た業障(ごっしょう・悪い業のこと)もすべてみな消滅するであろう。すべての地獄のさまざまな苦しみからもまた、解放されるであろう。また、鳥や畜生やその他の生き物に生まれ変わってしまった者たちも、この陀羅尼を一回でもその耳に聞くならば、その生が終われば再びその生を受けることはない」。
続けて仏は次のように語られた。
「大変悪い病気にかかった人が、この陀羅尼を聞くならば、すぐにその病から長く離れることができ、すべての病気もまた消滅し、またまさに悪道に堕ちるところだったとしても、またそれを断つことができ、悟りの世界に往生することができるであろう。その生以降、再び人間の生を受けず、蓮華の中に生まれ変わるであろう。また、過去に生まれ変わった生のことを忘れずに記憶し、常に宿命を知ることができるであろう」。
また仏は次のように語られた。
「ある人がいて、過去の世から大変重い罪業を作り、ついに命が終わって、その悪業によって地獄に堕ち、あるいは畜生、あるいは閻魔王の支配する世界、あるいは餓鬼に堕ち、あるいは地獄の最も深いところに落ち、あるいは水の中の生き物になり、あるいは獣などに生まれ変わったとする。しかし、その死者の骨を取り、一握りの土に対してこの陀羅尼を二十一回唱えて、その土をその死者の骨の上にかぶせれば、その死者はすぐに天に生まれ変わるであろう」。
また仏は次のように語られた。
「ある人がいて、毎日、この陀羅尼を二十一回唱えれば、まさにすべての世界の供養を受けたことと同じとなり、死後、極楽世界に往生するであろう。もし常に陀羅尼を念じていれば、大いなる悟りを得、また寿命を増して勝れた快楽を受け、その身の命が終われば、あらゆる妙なる諸仏の国に往生することができ、常に諸仏と共に一処に会し、すべての如来は常にこの者のために、妙なる教えを説き、すべての世尊はこの者に、仏になる約束を与え、その者の身の光は、すべての仏の世界を照らすであろう」。
また仏は次のように語られた。
「この陀羅尼を唱える方法は、その仏前において、先ず清らかな土を取って壇を作り、その大小に従って四角形にして、さまざまの草花を壇の上に散じ、多くの名香を焚き、右膝を地に着けて跪き、心は常に仏を念じ、慕陀羅尼印(ぼだらにいん)を結びなさい。その印とは、人差し指を折り曲げて親指をつけて合掌し、それを心臓の上に当てる。そしてこの陀羅尼を108回唱えて、その壇に雲のように花を降らせなさい。そうすれば、八十八を十の七乗倍し、さらに大河の砂の数をかけて、さらに千億倍してさらに百千倍した数の諸仏を供養したことになる。そしてその諸仏は、みな声を同じくして、「良いことだ。希有(けう)なことだ。まさにこの者は真実の仏の子だ」と褒めて言うであろう。そして、その者は無障碍智三昧(むしょうげちざんまい・何にも妨げられない瞑想という意味)を得、大菩提心荘厳三昧(だいぼだいしんしょうごんざんまい・最高の悟りを求める心を厳かに飾る瞑想という意味)を得るであろう。この陀羅尼を保つ者は、まさにこのようにするべきである。」
また仏は帝釈天に次のように語られた。
「私はこの方便(ほうべん・巧みな手段という意味)をもって、地獄に堕ちるべきすべての衆生を、そこから解放されるようにし、すべての悪道もまた清らかになるようにする。また、この陀羅尼を保つ者の寿命を増し加える。
帝釈天よ。あなたは帰って、私が説いた陀羅尼を善住天子に授け与えなさい。そして私が説いたようにして七日過ぎたら、あなたは善住天子と共に私に会いに来なさい」。
その時、帝釈天は、世尊からこの陀羅尼の教えを受け、謹んでその天に帰り、それを善住天子に授け与えた。その時、善住天子はこの陀羅尼を受けて、六日間、その教えに従って受け保ち、ついにすべての願いが満たされた。まさにあらゆる悪道の苦しみを受けるべきところ、そこから解放され、悟りを求める道に入り、寿命を測ることができないほど延ばすことができた。そして大いに喜び、声を高くして仏を讃えて次のように言った。
「希有なことです如来よ。希有なことです妙なる教えよ。希有なことです明らかな証よ。非常に得難きことです。私を解放してくださいました」。
その時、帝釈天は七日が過ぎて、善住天子と共に、多くの天衆を率いて、花の飾りや塗香や抹香や宝の旗や飾られた覆いや天の衣や宝の飾りなどを厳かに飾って、仏のところに行き、大いなる供養を行なった。妙なる天の衣および宝の飾りをもって、世尊の周りを百千周回って供養した。そして仏の前に立ち、踊るほどに喜んで座って教えを聞いた。
その時、世尊は金色の臂を伸ばして、善住天子の頭をなでて、彼のために教えを説き、彼が悟りを開いて仏になるという約束を与えた。そして仏は次のように語られた。
「この経を『浄一切悪道仏頂尊勝陀羅尼(じょういっさいあくどうぶっちょうそんしょうだらに)』と名付ける。あなたはまさに受け保つべきである」。
その時、大衆はこの教えを聞いて歓喜し、信じ受け、謹んで行った。

仏頂尊勝陀羅尼経 完

 

仏頂尊勝陀羅尼