大乗経典と論書の現代語訳と解説

経論を通して霊的真理を知る

法華玄義 現代語訳 102

『法華玄義』現代語訳 102

 

c.上の薬草

上の薬草は、三蔵教の菩薩の位である。この菩薩は、初めて悟りを求める心を起こしてより慈悲・四弘誓願をもって四諦を観察し、道諦をもって初門とし、六波羅蜜を行じる。最初の釈迦仏より罽那尸棄仏(けいなしきぶつ)の時までを第一阿僧祇劫(だいいちあそうぎこう)と名付ける。常に女人の身を離れ、また自ら将来、仏になるのかならないのかを知らない。二乗の位に則っているので、まさに五停心・別相念処・総相念処の位の中にある。慈悲の心をもって六波羅蜜を行じる。

そして、罽那尸棄仏より然燈仏(ねんとうぶつ)までの時を、第二阿僧祇劫と名付ける。その時、自ら仏になれると知るも、口では説かない。その位に則っているので、まさに煗法の位の中にある。すなわち性地(しょうち・通教の十地の第二。後述あり)における智慧である順忍(じゅんにん)の初心の位である。すでに真理の悟りに基づく信心があるので、必ず仏になれることを知っている。しかも、煗法の理解を用いて六波羅蜜を修行するが、心ではまだ明らかにされていないので、口で他の人に向かって仏になれることは説かないのである。

然燈仏より毘婆尸仏(びばしぶつ)の時に至るまでを、第三阿僧祇劫と名付ける。この時、心の中で明瞭に自ら仏になることを知って、口で自らこのことを語り、恐れはばかることはない。この位に則っているので、まさに頂法の位の中にある。六波羅蜜を修行し、四諦の理解明瞭にして、山頂に上って、明らかに四方を見るようなものである。そのために、仏になることを他の人に向かって説くのである。

もし三阿僧祇劫を過ぎて、三十二相の業を備えれば、これに則る位は、忍法の下忍の位である。この忍法の智慧を用いて六波羅蜜を行じ、百の福徳を成就し、百福を用いて、三十二相のうちの一相の因とする。下忍の位は、人間世界の中の仏が出現する時、得ることができるのである。そして修行道場に座って修行する時は、中忍・上忍を得る。さらに上忍に至った瞬間、真理の次元に入り、三十四心(さんじゅうよんしん・(四教の蔵教の八忍・八智・九無碍・九解脱を合わせて三十四心という)の煩悩を断じて、最高の悟りに至るので、これを仏とするのである。そこに至る前までは、これは三蔵教の菩薩であり、上の薬草の位である。