大乗経典と論書の現代語訳と解説

経論を通して霊的真理を知る

金光明最勝王経 大弁才天女品 第十五 (抜粋)

金光明最勝王経 大弁才天女品 第十五  (抜粋)

福徳に満ちた天女を敬い拝します。
あなたはこの世の中において自在を得ています。私は今尊者を讃嘆します。すべて昔の仙人の語った通りになるでしょう。福徳は成就して心は安隱であり、聡明であられることは恐れるほどであり、名聞は広まっています。母となってこの世の人々を生み、勇猛にして常に大いなる精進を行なわれます。軍陣をあらゆるところに展開して戦い、常に勝ち、また長く養い導き、心は慈悲と忍耐に満ちています。また閻魔大王の長女となって、常に天然の蚕の糸で作った青色の衣を着ています。ある時は好ましい容姿であり、ある時は恐ろしい容姿となって、その目の力は見る者を恐れさせます。無量の優れた行ないは世間を超え、信じる者をすべて受け入れられます。あるいは山奥の険しいところにおられ、あるいは洞窟や川の岸辺におられ、あるいは、うっそうとした森におられ、そのまわりには多くの天女が共に住んでいます。山林に住む野の人たちも、常に天女を供養します。孔雀の羽をもって旗を作り、常にこの世を守られます。師子や虎や狼は常に周りに付き従い、牛や羊や鶏もまた寄り頼みます。大いなる鈴や鐘を振って音を出し、仙人の住む山の人々もその響きを聞きます。三鈷を手に取り、頭の髪の毛を丸く結って、左右に日と月の旗を持たれます。満月から新月までの期間の九日と十一日において、まさに供養すべきです。あるいは、婆蘇(ばそ)大天女に姿を変え、戦争があることを常に哀れまれます。すべての存在の中で、弁才天女は最も優れておられ、勝る者はありません。牧牛歓喜女(もくごかんきにょ)に姿を変え、天と戦う時は常に勝たれ、長く世間に安らかに住まわれ、ある時は穏やかに忍耐され、またある時は暴悪となられます。大婆羅門の教えや幻化呪術などにもみな通じておられます。天人や仙人の中において自在を得て、また姿も極小から極大までとなります。多くの天女たちを集める時には、必ず応じて海のように集まります。多くの龍神や藥叉(やくしゃ)たちに対しても主となって導かれます。多くの女の中においても、最も正しく行なわれ、言葉を発すれば、この世の主のようです。王の住居においては蓮華のようであり、川辺にあっては美しい橋のようです。容貌は満月のようであり、多くの知識を持たれて、人々の拠り所となり、優れた弁論は高い峰のようです。弁才天を念じる者の数は渚の波のように集まり、阿修羅などの諸天衆はみな共にその功徳を稱讃し、さらに千の眼を持つ帝釈天も、尊敬の心をもって見ます。人々に願い事があれば、すべて速やかに成就させ、またよく語りよく学ぶようにさせ、この地において優れた者とされます。このあらゆる世界の中において、大いなる燈明のように常に普く照らし、および神鬼や諸禽獣にも、みなその求めるところを遂げさせます。多くの女の中において山の峰のようで、昔の仙人が久しく住んでいた世のようです。少女の天女のように、常に無欲であり、その真実の言葉は大いなる世の主のようです。普く世間とさまざまな人々、および欲界にある多くの天宮を見れば、その中でただ弁才天女ひとりが尊称をもって崇められ、その他の人々の中で勝る者は見出せません。恐ろしい戦争の中において、あるいは火の穴の中に堕ちる時、また川の氾濫や盗賊にあう時、すべて彼らの恐怖を除かれます。あるいは王の法律によって捕らえられ、あるいは仇のために殺害されそうになった時、もっぱら弁才天に心を注ぎ、念が移らなければ、必ずその多くの憂いや苦しみから解脱することができるでしょう。善い人また悪い人の中においても、その人々をみな擁護し、慈悲を与え哀れに思って、常に姿を現わされます。このために、私は誠を尽くして、大弁才天女に稽首し帰依します。

 

敬い拝す、敬い拝す、世間において尊いお方 多くの母の中において最も優れている 
すべての世界はことごとく供養し その容姿は人が見ることを願う 
あらゆる妙徳をもって身を荘厳にし 目は広い青蓮華の葉のようだ
福智と光明と名声は満ちて たとえば価値がつけられないほどの宝珠のようだ 
私は今最勝者を讃歎する すべての求める心を成就する 
真実の功徳は妙なる福徳である たとえば最も清淨な蓮華のようだ 
その身は端麗荘厳でありみな見ることを願う あらゆる稀有の姿形は不思議である 
無垢の智慧の光明を放つ あらゆる念の中において最勝である 
師子が獣の中で最上であるようだ 常に八つの腕をもって自らを荘厳する 
その各々の腕には弓・矢・刀・矛・斧・金剛杵(こんごうしょ)・鉄輪ならびに羂索(けんさく・=縄)を持つ 
その姿は端正にして見ることを願う満月のようだ 言葉は滞ることなく和音を出す 
もし人がいて心に願い求めれば 良い事は念に従って円満に成就する 
帝釈天をはじめ諸天はみな供養し みな共に称賛し帰依すべきである 
多くの徳が絶えず生ずることは不思議である すべての時において敬う心が起きる 
莎訶(そわか・「めでたし」という意味の真言

 

仏陀に帰依します。教えに帰依します。僧侶たちに帰依します。諸菩薩たち、縁覚、声聞、すべての賢聖に帰依します。
過去現在の十方の諸仏は、ことごとくみなすでに真実の言葉を取得し、相手の能力に応じて真実の言葉を説いて、虚しい誤った言葉はありません。すでに無量であり測ることもできないほどの長い歳月において、常に真実の言葉を説き、真実の言葉を受け入れた者はみな喜びました。偽りの言葉ではないために、広く長い舌を出し、その顔およびこの地上およびすべての天下を覆い、一千二千三千の世界を覆い、普く十方世界を覆い、その円満は広まって不思議であり、すべての煩悩の炎熱を除きます。
敬い拝し、敬い拝します。すべての諸仏のこのような舌の姿。願わくは (自らの名前など)、みな妙(たえ)なる弁論の才能を成就しますように。心を尽くして帰命し敬い拝します。
諸仏の妙なる弁論の才能、諸大菩薩の妙なる弁論の才能、一人で悟りを開いた聖者の妙なる弁論の才能、修行とその結果の妙なる弁論の才能、仏の教えの妙なる弁論の才能、教えに基づいた行動の妙なる弁論の才能、梵天たちの妙なる弁論の才能、大天烏摩(だいてんうま・自在天=シヴァ神の妃)の妙なる弁論の才能、塞建陀天(そこんだてん・シヴァ神の子)の妙なる弁論の才能、摩那斯王(まなしおう・龍の王)の妙なる弁論の才能、聡明夜天(そうみょうやてん)の妙なる弁論の才能、四大天王(=四天王)の妙なる弁論の才能、善住天子(ぜんじゅうてんじ・仏から『仏頂尊勝陀羅尼(ぶっちょうそんしょうだらに』を授かった天子)の妙なる弁論の才能、金剛密主(こんごうみっしゅ・密教大日如来の弟子)の妙なる弁論の才能、吠率怒天(べいしゅどてん・=ヴィシュヌ神)の妙なる弁論の才能、毘摩天女(びまてんにょ=大自在天の女性形)の妙なる弁論の才能、侍数天神(じしゅてんじん)の妙なる弁論の才能、室唎天女(しつりてんにょ)の妙なる弁論の才能、室唎末多(しつりまんだ)の妙なる弁論の才能、醯哩言詞(けいりごんじ)の妙なる弁論の才能。諸母大母(しょもだいも)の妙なる弁論の才能、訶哩底母(かりていも)の妙なる弁論の才能、諸薬叉神(しょやしゃじん・薬叉=夜叉、羅刹。森の神)の妙なる弁論の才能、十方諸王の妙なる弁論の才能、すでに持っている優れたわざを助け、極まりない妙なる弁論の才能を発揮させてください。
偽りない方を敬い拝します。解脱者を敬い拝します。欲を離れた人を敬い拝します。妨げを捨てた方を敬い拝します。心の清い方を敬い拝します。光明者を敬い拝します。真実の言葉を敬い拝します。汚れのない方を敬い拝します。優れた義に住まわれる方を敬い拝します。大衆の王を敬い拝します。弁才天を敬い拝します。私の言葉を広めさせてください。願わくは私の求めることを、みなことごとく速やかに成就させてください。病なく常に安隠に、寿命が延びることができますように。よく多くの神呪を理解し、悟りへの道を謹んで修行します。広く人々を導き、その心に求める願いを速やかに遂げさせましょう。私は真実の言葉を説きます。偽りない言葉を説きます。天女の妙なる弁論の才能を私に成就させてください。ただ願わくは天女が来て、私の言葉を滞りなく速やかに体と口の中に入れて、聡明な弁論の才能を増し加えてください。願わくは私の舌をもって、如来の弁論を得させてください。仏の言葉の威力によって、多くの人々を教え導きましょう。私が言葉を出す時、その事柄にしたがってみな成就し、聞く者が真理を敬う心を生じさせ、その行ないが空しくなりませんように。もし私が弁論の才能を求め、それが成就しなければ、天女の真実の言葉も、みなことごとく虚妄となるでしょう。地獄に堕ちる罪を作る者がいても、仏の言葉をもって導きましょう。および阿羅漢の言葉や、あらゆる仏のご恩に報いる言葉、舍利子や目犍連(もっけんれん)などの、仏の弟子で第一の者の真実の言葉を、願わくは私に成就させてください。
私は今、仏の声聞大衆を招集します。みな願わくは速やかに来至し、私の求める心を成就させてください。求める真実の言葉、みな願わくは偽りでないように。上は色究竟天(しきくきょうてん)より、浄居天(じょういてん)、大梵天王および梵輔天(ぼんほてん)、すべての梵王衆、さらに三千世界に遍満する娑婆世界の人々、ならびに多くの従者たちを、私は今、招集します。ただ願わくは慈悲を下され、哀憐され、受け入れてください。他化自在天(けたじざいてん)および楽変化天(らくへんげてん)、やがて仏になられる弥勒菩薩のおられる兜率天(とそつてん)の衆、夜摩天(やまてん)の諸天衆、および三十三天、四大天王衆の天、すべての諸天衆、地水火風の神、妙高山に住む者、七海山に住む神、あらゆる諸の従者、満財および五頂、日月と諸の星辰、このような諸天衆は、世間を安隠にされ、これらの諸天神は、罪業を行なうことを願われません。鬼子母神および最小の愛児を敬い拝します。天竜八部衆に向かって、私は仏の力をもって、ことごとくみな招集します。願わくは慈悲心を下され、私に妨げのない弁論を与えてください。すべての人と天の衆、よく他の心を理解する者、みな願わくは神力を加え、私に妙なる弁論の才能を与えてください。さらに虚空を尽し、すべての世界に遍満するあらゆる生き物のたぐい、私に妙なる弁論の才能を与えてください。」

 

弁才天