大乗経典と論書の現代語訳と解説

経論を通して霊的真理を知る

2022-01-01から1年間の記事一覧

法華玄義 現代語訳 208

『法華玄義』現代語訳 208 結 記者が私的に異説について記す。 ①.異説を挙げて記す a.『法華経』と『般若経』の比較 ある人が、『大智度論』の「会宗品」に、十の大いなる経典を挙げていることを引用している。「『雲経』『大雲経』『法華経』がある。…

法華玄義 現代語訳 207

『法華玄義』現代語訳 207 第六項 増数に教えを明らかにする (注:仏教用語には、それぞれの各要素を数えてまとめるために、数字のつくものが非常に多い。それらを網羅するために、その数字ごとに並べて見ていく方法が取られる。それは一から始まり、次…

法華玄義 現代語訳 206

『法華玄義』現代語訳 206 第五項 通別料簡 料簡にあたって、三つの項目を立てる。一つめは、通別についてであり、二つめは、益・不益であり、三つめは、諸教についてである。 第一目 通・別について 五味の教えと半字・満字については、その教えが説かれ…

法華玄義 現代語訳 205

『法華玄義』現代語訳 205 第三項 五味半満相成 もしただ五味の教えだけを論じるだけならば、なお南師の方便を得た説と同じである。もしただ半字満字だけならば、なお北師の実を得た説と同じである。ここで、五味の教えは半満を離れず、半満は五味の教え…

法華玄義 現代語訳 204

『法華玄義』現代語訳 204 第三目 信解品からの引証 「信解品」の須菩提と摩訶迦旃延と摩訶迦葉と摩訶目揵連の四大声聞が教えを理解したことの記述を引用して、この教判の次第を証明する。その経文に「父はいつもその子のことを思っていたが、子には会え…

法華玄義 現代語訳 203

『法華玄義』現代語訳 203 第二目 無量義経からの引証 経文に「私は仏の眼をもってすべての法を観じれば、説くべきではないと思った。それはなぜか。あらゆる衆生の能力や願いは同じではない。能力や願いが同じでないならば、さまざまに教えを説いても、…

法華玄義 現代語訳 202

『法華玄義』現代語訳 202 第二項 三箇所からの引証 三箇所とは、『法華経』の「方便品」と、『無量義経』と、『法華経』の「信解品」である。 第一目 方便品からの引証 「方便品」に「私が初めて道場に坐って、菩提樹を見て歩み、二十一日間の中において…

法華玄義 現代語訳 201

『法華玄義』現代語訳 201 第五節 教相を判ず 教相を判別するにあたって、六つの項目を立てる。一つめは大綱を挙げ、二つめは三箇所からの文を引用して証し、三つめは五味半満相成であり、四つめは合不合を明らかにし、五つめは通別料簡し、六つめは増数…

法華玄義 現代語訳 200

『法華玄義』現代語訳 200 第四節 研詳去取 研詳去取(けんしょうこしゅ)とは、実を詳しく調べることを「研」といい、権を詳しく調べることを「詳」といい、法相に適うために「去取(取捨選択のこと)」をすることである。 もし五時をもって教えを明らか…

法華玄義 現代語訳 199

『法華玄義』現代語訳 199 第七目 五宗の批判 五宗に対する批判は、その中の四宗に対して非難したことは同じである。もし『華厳経』を法界宗として、『大般涅槃経』と異なり、『涅槃経』は法界宗ではなく、ただ常宗と名付けると言うならば、『大般涅槃経…

法華玄義 現代語訳 198

『法華玄義』現代語訳 198 第二項 北地の批判 第一目 五時の意義の批判 もし『提謂波利経(だいはりきょう・現在では中国で作られた偽経とされている)』に五戒・十善を説くと言うならば、実際は、その経典にはただ五戒を明らかにするのみであり、十善は…

法華玄義 現代語訳 197

『法華玄義』現代語訳 197 第五目 第五時教の批判 「第五時教」が、釈迦入滅時の仏身の常住、衆生の仏性、一闡提の作仏を説いている、と主張していることについての批判は、以下の通りである。 もしそうならば、問う。成実宗の論師は、俗諦と真諦の二諦に…

法華玄義 現代語訳 196

『法華玄義』現代語訳 196 第三目 褒貶抑揚教の批判 第三に、褒貶抑揚教は「第三時」であると主張する人々は、次のように言っている。仏の寿命は七百阿僧祇(ななひゃくあそうぎ・『首楞厳三昧経』に釈迦の寿命がこのように記されている。阿僧祇も数えき…

法華玄義 現代語訳 195

『法華玄義』現代語訳 195 第三節 難を明らかにする 難を明らかにするにあたって、まず南地の五時教を批判する。その意義が成就しなければ、同様に他の四時教と三時教も破られることになる(注:前に述べられていたように、南地は、三時と四時と五時の教…

法華玄義 現代語訳 194

『法華玄義』現代語訳 194 第二節 異解を出す 異なった解釈を挙げることにおいて、十種ある。いわゆる「南三北七(なんさんほくしち・天台大師当時、教判における十種の説が、揚子江流域の三人と、黄河流域の七人によって主張されていたことによる)」で…

法華玄義 現代語訳 193

『法華玄義』現代語訳 193 第五章 判教 『法華玄義』の大きく分けた章のうちの第五章は、「判教」である(注:教相判釈・教判・判教などはすべて同じ意味であるが、五重玄義の項目の題としては、「教を判ず」という意味で、「判教」と表現される)。 もし…

法華玄義 現代語訳 192

『法華玄義』現代語訳 192 第四節 四悉檀に対する 権実の二智の十用は同じではない。すなわち同じ仏の説法は、衆生の能力に従ってそれぞれ理解される。迹の中の破・廃は、七方便の人々に仏の知見を開かせる。本の中の破廃は、大河の砂の数ほどの菩薩が起…

法華玄義 現代語訳 191

『法華玄義』現代語訳 191 第二項 本門の歴別 本門の用の段階を分別するにあたって、十の項目を立てる。もし文の便宜を助けるならば、まさに開近顕遠と言うべきである。もし意義の便宜を取るならば、まさに本迹と言うべきである。迹を近とし、本を遠とす…

法華玄義 現代語訳 190

『法華玄義』現代語訳 190 第三節 歴別を明らかにする 用の段階を分別するにあたって、1.迹門と、2.本門に分ける。 第一項 迹門の歴別 迹門の用の段階を分別するにあたって、十の項目を立てる。一つめは、a.破三顕一、二つめは、b.廃三顕一、三つ…

法華玄義 現代語訳 189

『法華玄義』現代語訳 189 第四章 論用 『法華玄義』の大きく分けた章のうちの第四章は、「論用(ろんゆう)」である。用(ゆう)とは如来の妙の能力であり、『法華経』の優れた働きのことである。如来は権と実の二つの智慧をもって妙の能力とし、『法華…

法華玄義 現代語訳 188

『法華玄義』現代語訳 188 第五節 因果を結成する 因果を結ぶことを述べるにあたって、二つの項目を立てる。一つめは因果を結び、二つめは四句をもって考察する。 第一項 因果を結ぶ そもそも経典に因果を説くことは、正しく共通して三界の中の生身と、三…

法華玄義 現代語訳 187

『法華玄義』現代語訳 187 第三節 諸経典の同異を明らかにする あらゆる経典の迹門の因果については、あるものは『法華経』と同じで、あるものは異なる。本門の因果はすべて異なっている。 迹門の因果については、そもそも実相はすべてに通じて、あらゆる…

法華玄義 現代語訳 186

『法華玄義』現代語訳 186 第三章 明宗 『法華玄義』の大きく分けた章のうちの第三章は、「明宗」である。宗とは、修行の重要な意味、体を顕わす大切な道である。家が保たれるための梁や柱のようなものであり、網を結ぶ大綱のようなものである。大綱を引…

法華玄義 現代語訳 185

『法華玄義』現代語訳 185 第六節 遍く諸行の体について 諸行の体について述べるにあたり、四つの項目を立てる。一つめは、1.諸行の同異について、二つめは、2.経による行について、三つめは、3.麁と妙の判別、四つめは、4.開麁顕妙である。 第一…

法華玄義 現代語訳 184

『法華玄義』現代語訳 184 第四項 開顕を示す 問う:『中論』は、まず大乗の門を明らかにし、後に二乗の門を明らかにしている。ここではなぜまず小乗の門を明らかにし、後に大乗の門を明らかにしているのか。 答える:『中論』は、当時の人が誤った見解に…

法華玄義 現代語訳 183

『法華玄義』現代語訳 183 第二目 諸門について麁と妙を判断する まず三蔵教の四門について明らかにする。この四門はすべて能通である。四門に執着すれば、共にみな妨げとなる。門が成就されることと門が退けられることと麁と妙に優劣はない。これは一概…

法華玄義 現代語訳 182

『法華玄義』現代語訳 182 第三項 麁妙を示す 門の麁と妙を述べるにあたって、二つの項目を立てる。一つめは、能所について麁と妙を判断し、二つめは、あらゆる門について麁と妙を判断する。 第一目 能所について麁妙を判断する 能と所について、四種があ…

法華玄義 現代語訳 181

『法華玄義』現代語訳 181 B.円観を明らかにする すでに円教の四門を述べてきたが、今、有門による円教の観法について述べる。並べて記せば十の意義がある(注:「蔵教」「通教」「別教」と同様に、ここから「十法成乗観(=十乗観法)」について記され…

法華玄義 現代語訳 180

『法華玄義』現代語訳 180 第四.次第・不次第 もし有をもって門とすれば、門によって修行する場合、次第する段階の差がある。微かなことから著しいことに至るまで、一つの行の中に無量の行が含まれることはなく、最後の非空非有門までこれは同じである。…

法華玄義 現代語訳 179

『法華玄義』現代語訳 179 Ⅳ.円教について (注:これ以降、「第二目 概略的に門に入る観法を示す」の最後の四番目の「円教」について述べられるが、この箇所は非常に長い)。 円教における実相に入る門の観法を明らかにするにあたって、第一に、円門を…