大乗経典と論書の現代語訳と解説

経論を通して霊的真理を知る

2022-03-01から1ヶ月間の記事一覧

法華玄義 現代語訳  84

『法華玄義』現代語訳 84 ◎定聖行(じょうしょうぎょう) 定聖行について述べるにあたって、三つの項目を立てる。一つめは、世間禅(せけんぜん)、二つめは、出世間禅(しゅっせけんぜん)、三つめ、出世間上上禅(しゅっせけんじょうじょうぜん)である…

法華玄義 現代語訳  83

『法華玄義』現代語訳 83 ○別願 また、四弘誓願は総合的な総願であるが、個別的な別願について次に述べる。自分自身の心を抑制することから別願が起こる。たとえこの身が熱せられた鉄の床に臥すようなことになっても、破戒することになるなら、他の床には…

法華玄義 現代語訳  82

『法華玄義』現代語訳 82 c.五行によって行妙を述べる 次に、五行によって行妙を述べる。まず別教の五行について明らかにし、次に円教の五行について明らかにする。 (注:これから、別教の五種類の行と円教の五種類の行によって「行妙」が明らかにされ…

法華玄義 現代語訳  81

『法華玄義』現代語訳 81 b.項目が少ない行から多い行へと述べる 次に、四教それぞれの行において、項目の数が少ないものから多いものへと順を追って述べる(注:一つずつ項目を増す、ということは、単に頭の中で整理しやすくするためであり、どれが優れ…

法華玄義 現代語訳  80

『法華玄義』現代語訳 80 ③.行妙 (注:「迹門の十妙」の中の第三番めである「行妙」の段落となる) 第三に、行妙について詳しく述べるにあたって、三つある。一つめは、概略的に一段階ずつ進む「行」について述べ、二つめは、四教それぞれの行において、…

『観心本尊抄』 9 (完)

『観心本尊抄』解説および現代語訳 9 (完) 疑って問う:正法と像法の二千年の間に、この地涌の千界の菩薩たちは、この地に出現してこの『法華経』を広めたのだろうか。 答える:そうではない。 驚いて問う:『法華経』ならびに本門は、仏の滅後のために、…

『観心本尊抄』 8

『観心本尊抄』解説および現代語訳 8 問う:この経文の「そこから使いを送って、『あなたたちの父は死んだ』と伝えさせた」とある「使い」とは誰か。 答える:それは四依(しえ・説明前出)である。四依に四類ある。小乗の四依の多くは、正法の前半の五百年…

『観心本尊抄』 7

『観心本尊抄』解説および現代語訳 7 問う。正法像法の二千余年の間は、四依の菩薩(しえのぼさつ・『涅槃経』に記されている仏のいない世で拠り所となる四種類の人物像)ならびに人師などは、他の仏たち、小乗、権大乗、『法華経』以前や『法華経』の迹門…

『観心本尊抄』 6

『観心本尊抄』解説および現代語訳 6 問う:まだ先にあげた論難について理解ができないが、どうなのか。 答える:『無量義経』に「まだ六波羅蜜(ろくはらみつ・大乗の修行者が行なう六つの修行項目)が成就されていなくても、六波羅蜜自体は自然と存在する…

『観心本尊抄』 5

『観心本尊抄』解説および現代語訳 5 問う:龍樹や天親などについてはどうか。 答える:これらの聖人は、知っていても説かなかった人たちである。あるいは、迹門の一部分だけを述べて、本門と観心は語らず、あるいは、語る相手はいても、時至っていなかった…

法華玄義 現代語訳  79

『法華玄義』現代語訳 79 第二.展転して相照らす 境に対して智を述べる第二は、「展転して相照らして境に対する」である。 これまで述べて来た十如是・十二因縁・四諦・二諦・三諦・一諦の六つの境に対する智は、またそれぞれ他の境も照らすのである。 (…

『観心本尊抄』 4

『観心本尊抄』解説および現代語訳 4 仏の道において人には二種ある。一つは仏から直接『法華経』を聞いて仏の道を得る者であり、二つは仏に会ってはいないけれども、『法華経』を読んで仏の道を得る者である。さらに仏教が起こる以前は、中国の道士やイン…

『観心本尊抄』 3

『観心本尊抄』解説および現代語訳 3 問う:出典はわかったが、修行である観心についてはどうか。 答える:観心とは、自分の心を観察して十法界を見ることである。これを観心という。たとえば、他人の目耳鼻舌身意の六根(ろっこん)を見るとしても、まだ自…

法華玄義 現代語訳  78

『法華玄義』現代語訳 78 もし智慧を表わそうとすれば、必ず観心を成就すべきである。広く観心の智慧を述べるならば、そこに因果がある。すなわち観心は因であり智慧は果である。たとえば、仏性ということに関しても、そこに因果があり、因は仏性であり、…

『観心本尊抄』 2

『観心本尊抄』解説および現代語訳 2 疑って問う:『法華玄義』第二巻には「また一法界に九法界を備えれば百法界に千如是となる」とあり、また『法華文句』第一巻には「一入に十法界を備えれば、一法界は十界となる。その十界の各々に十如是があるので、一…

法華玄義 現代語訳  77

『法華玄義』現代語訳 77 ◎三諦との比較 次に三諦の境と比較して、智を述べる。すでに五種(注:二諦の七種から中道のない蔵教と通教を除いた五種。ここでは①~⑤の数字をつけて整理する)の三諦について述べたが、ここでさらに分別する。 そもそも三諦の智…

毘沙門天王功徳経 現代語訳

仏説毘沙門天王功徳経 このように仏から聞いた。 ある時、仏が王舎城(おうしゃじょう)の竹林精舎(ちくりんしょうじゃ)において、大いなる千二百五十人の比丘たちと共におられた。 その時、弟子の阿難(あなん)は一心に合掌して仏に次のように申し上げた…

法華玄義 現代語訳  76

『法華玄義』現代語訳 76 また、「析空観の蔵教の二智」「体空観の通教の二智」「体空観に中道が含まれる別入通教の二智」「体空観に中道が表わされている円入通教の二智」のそれぞれに「化他の権実」「自行化他の権実」「自行の権実」がある合計十二種の…

『観心本尊抄』 1

『観心本尊抄』解説および現代語訳 1 如来滅後五五百歳始観心本尊抄 文永十年(1273年)四月二十五日 五二歳 本朝沙門 日蓮 撰 天台大師(てんだいだいし:智顗(ちぎ・538~598)。中国の陳から隋の天台宗第三祖。実質的の開祖とも言える)の『…

法華玄義 現代語訳  75

『法華玄義』現代語訳 75 ◎二諦に対する 次に二諦に対する智を述べるとは、権と実の二智である。先に述べた真諦・俗諦の二諦に七種があったように、この権・実の二諦も七つに分けることができる。三界の内外の相即(そうそく・互いに融合し合うこと)と不…

法華玄義 現代語訳  74

『法華玄義』現代語訳 74 ◎四種の四諦に対する 次に四種の四諦に対する智を述べる。『涅槃経』に「聖諦(=四諦)を知る智慧に二種ある。中智と上智である。中智とは声聞と縁覚の智慧であり、上智とは諸仏と菩薩の智慧である」とある。もしこの文によるな…

法華玄義 現代語訳  73

『法華玄義』現代語訳 73 b.境に対して智を述べる 境に対して智を述べるにあたって、二つの項目を立てる。第一は、「五境に対する」であり、第二は、「境に対して展転して相照らす」である。 第一.五境に対する 境に対して智を述べる第一は、「五境に対…

法華玄義 現代語訳  72

『法華玄義』現代語訳 72 第六.開 諸智を解釈するにあたっての第六は開(かい)であり、二十智について麁と妙を融合することである。 (注:法華経の中心的教えは、麁を妙と融合することだという観点から、究極的には、すべての智慧も妙の智慧となるのだ…