大乗経典と論書の現代語訳と解説

経論を通して霊的真理を知る

2021-01-01から1年間の記事一覧

法華玄義 現代語訳  36

『法華玄義』現代語訳 36 第三項 因の働きの優劣の四つの難点について 『大智度論』に「多くの所で無明を破る禅定である破無明三昧を説く」とある。これは、教えの働きが優れていることである。このことを知らないことを無明という。また「仏は一切種智(…

法華玄義 現代語訳  35

『法華玄義』現代語訳 35 (注:ここからは、先にあげられた光宅寺法雲の説を批判する内容となる。光宅寺法雲の解釈でも『法華経』を最も優れた経典とするということは、天台大師と同じように見える。しかし、『法華経』以前の経典を「麁」、つまり妙では…

法華玄義 現代語訳  34

『法華玄義』現代語訳 34 第二節 前後を定める 次に、妙法という名称の前後を定めるとは、妙法についてわかりやすく述べるために、先に法について解釈し、次に妙について述べるということである。 (注:経典名が『妙法蓮華経』であるから、「釈名」におい…

法華玄義 現代語訳  33

『法華玄義』現代語訳 33 第二部 各論 第二に各論をもって五重玄義について述べる。 第一章 釈名 はじめに、五重玄義の最初の釈名を四つに分けて述べる。一つめは、通と別を判別する。二つめは、前後を定める。三つめは、旧(く)を出(いだ)す。四つめは…

法華玄義 現代語訳  32

『法華玄義』現代語訳 32 第十項 通経(つうぎょう) 四悉檀を解釈するにあたっての十種の項目の第十は、「通経」である。 問う:四悉檀を用いて『法華経』を解釈すると言うが、『法華経』のどこに四悉檀について記されているのか。 答える:『法華経』の…

法華玄義 現代語訳  31

『法華玄義』現代語訳 31 第九項 開顕(かいけん) 四悉檀を解釈するにあたっての十種の項目の第九は、「開顕」である。権を開いて実を顕わすことを「開権顕実」といい、略して開顕という。開権顕実とは、すべての実在はみな、言葉に表現できない真理の表…

法華玄義 現代語訳  30

『法華玄義』現代語訳 30 第八項 権実(ごんじつ) 四悉檀を解釈するにあたっての十種の項目の第八は、「権実」である。「権」とは仮(かり)という意味であり、「実」とは真理そのものという意味である。 四諦の一つ一つに四悉檀があるということは、全般…

法華玄義 現代語訳  29

『法華玄義』現代語訳 29 第七項 用不用(ゆうふゆう) 四悉檀を解釈するにあたっての十種の項目の第七は、「得用不得用」であり、略して「用不用」という。そもそも四悉檀は、如来のみがそれを完璧に得て、完全に用いるものである。これを「得用(とくゆ…

法華玄義 現代語訳  28

『法華玄義』現代語訳 28 第六項 説黙(せつもく) 四悉檀を解釈するにあたっての十種類の項目の第六は、説黙である。「説」は人々に教えを説くことであり、「黙」は言葉によらず人々に真理を示すことである。このことについて、『思益梵天所問経(しやく…

法華玄義 現代語訳  27

『法華玄義』現代語訳 27 第三目 三蔵教に属する十二部経について また、四教の中にそれぞれ十二部経(すべての経典を十二種類に分類したもの)」があり、それらは四悉檀によって分別できる。 まずは、三蔵教に属する十二部経(下記①~⑫)についてである。…

法華玄義 現代語訳  26

『法華玄義』現代語訳 26 第二目 教え起こす起教について 『大智度論』には、「仏は常に黙っていることを願うのであって、説法は願っていない」とあり、『維摩経』には、真理は言葉にできないので黙っていたということが記されており、『法華経』には、「…

法華玄義 現代語訳  25

『法華玄義』現代語訳 25 第五項 起観教(観心と教えを起こすことについて四悉檀を解釈する) 第一目 観心を起こす起観について 玄妙な理法は観心によらなければ明らかにすることはできない。その真理を明らかにする観心は、四悉檀によらなければ起こらな…

法華玄義 現代語訳  24

『法華玄義』現代語訳 24 (注:これより再び天台大師の講述となる)。 第三項 釈成(四随によって四悉檀の解釈を深める) 四悉檀は龍樹の『大智度論』の所説であり、四随(しずい)は『禅の経典』に記されている仏の教えである。ここで、この仏の教えをも…

法華玄義 現代語訳  23

『法華玄義』現代語訳 23 ⑩また、天台大師が『大智度論』の記述を引用しつつ、四悉檀について述べたそれぞれ四つの解釈の中に、さらに四悉檀が含まれている。 大師は、世界悉檀の解釈の中で、五陰・十二入・十八界のことを説いているが、それらが別々であ…

法華玄義 現代語訳  22

『法華玄義』現代語訳 22 私、灌頂が十五の段落(①~⑮)を設けて、四悉檀についての理解の助けになることを目的として述べる。 (注:ここから、筆者の灌頂の記述となる)。 ①事象的なことと理法的なことを説いて、聞く者を喜ばすのは、世界悉檀である。各…

法華玄義 現代語訳  21

『法華玄義』現代語訳 21 第二項 弁相(べんそう・四悉檀の各項目を解釈し説明する) 第一目 世界悉檀(せかいしっだん)について 世界悉檀の「世界」とはこの世の次元を表わすものである。それは車に喩えられる。車はさまざまな部品がそろって車となる。…

法華玄義 現代語訳  20

『法華玄義』現代語訳 20 第二節 四悉檀について 四悉檀を解釈するにあたって、十種類の項目を立てる。まずその名称だけをあげると、釈名、弁相、釈成、対諦、起観教、説黙、用不用、権実、開顕、通経である。 第一項 釈名(しゃくみょう・「四悉檀」とい…

法華玄義 現代語訳  19

『法華玄義』現代語訳 19 第七章 会異(えい) 七番共解の第七は、「会異」である。 (注:会異とは、異なったものを合わせるという意味である。見た目には名称や内容が異なっていても、真理に立てば、それらはみな同じ真理の表現として一つにすることがで…

法華玄義 現代語訳  18

『法華玄義』現代語訳 18 第六章 観心(かんじん) 七番共解の第六は、観心である(注:「観心」とは心を観察するという意味)。 同じく七番共解の標章・引証・生起・開合・料簡の五つにおいて、それぞれ観心が明らかにされているのである。 (注:ここま…

法華玄義 現代語訳  17

『法華玄義』現代語訳 17 第五章 料簡(りょうけん) 七番共解の第五は、料簡である。 (注:「料簡」とは「検討する」という意味であり、ここでは五重玄義についての検討が問答形式で進められる。この問答は、五重玄義の五つの項目の一つ一つに対して述べ…

法華玄義 現代語訳  16

『法華玄義』現代語訳 16 第四章 開合(かいごう) 七番共解の第四は、開合である。 (注:開合の「開」とは、教えの究極的真理を見抜いて明らかにすることである。隠された真理を明らかにすることなので、開くという意味の言葉を用いる。そして、究極的真…

法華玄義 現代語訳  15

『法華玄義』現代語訳 15 第三章 生起(しょうき) 七番共解の第三は、生起である。 (注:五重玄義の各項目は、正しい順序に従って制定されているということを論証する)。 生じさせる働きを「生」といい、生じされられるものを「起」という。そこには、…

法華玄義 現代語訳  14

『法華玄義』現代語訳 14 第六節 引証判教 『法華経』は、他の経典を包括して、仏の真意を明らかにする経典である。このことを、『法華経』の「薬王菩薩本事品(やくおうぼさつほんじほん)」では、十の譬喩を用いて、『法華経』の教えを讃えているが、こ…

法華玄義 現代語訳  13

『法華玄義』現代語訳 13 第二章 引証(いんしょう) 七番共解の第二は、引証である。 (注:「引証」とは、経文を引用しながら論証する方法である。五重玄義の各項目に関する『法華経』の経文を引用しながら進めるのである。なお、釈名、弁体、明宗、論用…

法華玄義 現代語訳  12

『法華玄義』現代語訳 12 第六目 顕露不定教(けんろふじょうきょう) ここまで教えを分別してきたが、ここまでの分別の仕方は、教えとその教えによって得られる悟りがはっきりしている場合について、漸教・頓教そして五味の喩えによって分ける方法であっ…

法華玄義 現代語訳  11

『法華玄義』現代語訳 11 第五節 標教(標章判教) 教相(きょうそう)を述べることの名称について、三つの項目を立てる。一つめは、根性の融不融の相、二つめは、化道の始終不始終の相、三つめは、師弟の遠近不遠近の相である。 教相の「教」とは、悟りを…

法華玄義 現代語訳  10

『法華玄義』現代語訳 10 第四節 標用(標章論用) 経典の働きを表わす名称の解釈にあたって、三つの項目を立てある。一つめは、示(じ)、二つめは、簡(けん)、三つめは、益(やく)である。 第一項 示(言葉の意味を示す) 経典の霊的働きを「用」とい…

法華玄義 現代語訳  09

『法華玄義』現代語訳 09 第三節 標宗(標章明宗) (注:ここからは再び、天台大師の講述となる)。 経典が記された目的を表わすという名称の解釈にあたって、三つの項目を立てる。一つめは、示(じ)、二つめは、簡(けん)、三つめは、結(けつ)である…

法華玄義 現代語訳  08

『法華玄義』現代語訳 08 第二節 標体(標章弁体) 次に五重玄義の第二である「弁体」は、経典の教えの真実の体(たい・本体という意味)について述べられるが、その「標章」として四つの項目を立てる。一つめは、釈字(しゃくじ)、二つめは、引同(いん…

法華玄義 現代語訳  07

『法華玄義』現代語訳 07 第一章 標章(ひょうしょう) (注:これより章・節・項・目などの見出しで段落を着けていくが、この区切りは必ずしも伝統的な分け方ではなく、その都度、適宜にわかりやすいと思われる流れに従って分けたものである。さらに目以…