大乗経典と論書の現代語訳と解説

経論を通して霊的真理を知る

2023-08-01から1ヶ月間の記事一覧

『摩訶止観』抄訳 その8

『摩訶止観』巻第一の上 「序分縁起」の段より 止観の明静であることは、まさに前代未聞である。 天台智者大師は、大隋開皇十四年四月二十六日より、荊州の玉泉寺において、一夏(いちげ・夏安居(げあんご)の期間・四月中旬から七月中旬ごろ)の期間に、朝…

『摩訶止観』抄訳 その7

『摩訶止観』巻第一の下 「六即に約す」の段より ◎六即について 六即によって真実を表わす(第一章「大意」の第一節「発大心」の第三項「是を顕す」に、「四諦に約す」「四弘誓願に約す」「六即に約す」の三目があり、その第三目)。 問う:(注:「問う」は…

『摩訶止観』抄訳 その6

『摩訶止観』巻第一の上 「三種の止観」の段より (注:「◎三種の止観」の後半となる) 〇経を引用して述べる ここでは、漸次止観と不定止観とは置いて論じない。ここでは、経典によって、さらに円頓止観について明らかにする。 非常に深い妙徳に了達してい…

『摩訶止観』抄訳 その5

『摩訶止観』巻第二の下 「感大果」「裂大網」の段より (注:『摩訶止観』の構成は、五略十広(ごりゃくじっこう)というが、全体は「十広」といわれる十章に別れ、その第一章が、「五略」といわれる全体を概略的に記した五節からなる「大意」である。そし…

『摩訶止観』抄訳 その4

『摩訶止観』巻第二の下 「帰大処」の段より ◎帰すべき境地 第五に、すべては絶対的な空(注:原文は「畢竟空」。絶対的な空を意味し、空でないことに相対しない空)であるという究極的境地(大処)に帰すために、正しい止観(注:原文は「是の止観」。是は…

『摩訶止観』抄訳 その3

『摩訶止観』巻第五の上 「観不可思議境」の段より 一心に十法界(じっぽうかい・地獄、餓鬼、畜生、修羅、人、天、声聞、縁覚、菩薩、仏という人が経るところの十種の世界)が具わっている。各一法界にまた他の十法界が具(そな)わっていれば、百法界であ…

『摩訶止観』抄訳 その2

『摩訶止観』巻第三の上 「止観の名義」の段より 第二章 止観の名義 第二章として、止観の名称を解釈する。止観についての大意はすでに説いた。ではまたどのような意義をもって、止観の名称を立てるのか。これには概略的に四つある。 一つめは相待(そうだい…

『摩訶止観』抄訳 その1 

『摩訶止観』巻第一の上 「三種の止観」の段より (注:見出しは訳者が便宜上付ける) 〇三種の止観 天台智者大師は南岳慧思禅師より三種の止観を伝えられた。一つは漸次止観(ぜんじしかん)、二つは不定止観(ふじょうしかん)、三つは円頓止観(えんどん…

『摩訶止観』抄訳 はじめに

『摩訶止観』抄訳 はじめに 『摩訶止観』を抄訳する理由 先に完訳した『法華玄義』では、『法華経』がすべての経典を総括するということが、一定の理論体系をもって、最初から最後まで一貫して述べられている。そのため、その範囲は広大であって、その論理は…

開目抄 その17 (完)

『法華文句』には、「問う。『涅槃経』では、国王に従って弓矢を持ち、悪人をくじけと明らかにされている。一方、『法華経』では、権勢から離れ、謙遜に慈善を行なえとあり、この剛と柔が互いに真逆となっている。これがどうして異なっていないことがあろう…

開目抄 その16

疑って言う:どうしてあなたが受けた流罪や死罪などを、過去の業の因縁だとわかるのか。 答える:銅鏡は色形を映し出すものである。秦王の験偽(けんぎ・嘘を見抜くこと)の鏡は現在の罪を映し出すという。仏法の鏡は過去の業の因縁を映し出す。『般泥洹経』…