大乗経典と論書の現代語訳と解説

経論を通して霊的真理を知る

千手千眼観世音菩薩広大円満無礙大悲心陀羅尼経(前半のみ) その5

(注:ここまでは、観世音菩薩が仏に申し上げたり、また梵天に語ったりする流れであったが、ここからは、仏が弟子の阿難に語る形となる。そして文章の内容も、ここまでとは異なった説法の場を思わせる流れとなる。)

仏は阿難に次のように語られた。
「もし国土に災難が起る時、この土の国王が正しい教えによって国を治め、寛容であり物事を曲げない人物であり、衆生の過ちを赦し、七日七夜身心共に精進してこの大悲心陀羅尼神呪を読誦し保てば、その国土のすべての災難はすべてみな除かれ滅ぼされ、五穀豊穣であり人々は安楽に暮らすであろう。
また他国の怨敵が度々来て侵略し、すべての民は恐れ、大臣は謀叛を起こし、疫病が流行し、洪水や干ばつが起こり、太陽や月が光を失うなどの、さまざまな災難が起こる時は、まさに千眼大悲心像を造り、その面を西方に向け、あらゆる香華、幢旛、宝蓋、百味飲食をもって至心に供養すべきである。またその王は七日七夜身心共に精進し、この陀羅尼神妙章句を読誦し保てば、外国の怨敵は速やかに自ら降伏し、それぞれの政治は自らが行なって、互いに交渉することはなくなる。国土の行き来も通じて、互いに慈心をもって交易をする。王子百官はみな忠実であり、妃后婇女は敬う心をもって王に対し、諸龍や鬼神はその国を擁護し、風雨順時に果実豊穣であり人民は喜び楽しむであろう。
またもし家の内で、重い悪病が生じ、多くの怪しいものが集まり、鬼神邪魔などがその家を乱し、悪人がしきりに悪いうわさを流して妨害し、大小さまざまに身内、内外に不和が起こったならば、まさに千眼大悲像の前にその壇場を設け、至心に観世音菩薩を念じ、その陀羅尼を読誦して千遍に達すれば、このような悪事はことごとくみな消滅し、永く安穏を得るであろう」。
阿難は仏に次のように申し上げた。
「世尊よ。この呪の名を何といい、どのように受け保つのがよろしいでしょうか」。
仏は阿難に次のように語られた。
「この神呪には、さまざまな名称がある。一に広大円滿、一に無礙大悲、一に救苦陀羅尼、一に延寿陀羅尼、一に滅悪趣陀羅尼、一に破悪業障陀羅尼、一に滿願陀羅尼、一に隨心自在陀羅尼、一に速超上地陀羅尼である。このように受け保ちなさい」。
阿難は仏に次のように申し上げた。
「世尊よ。この菩薩摩訶薩の名は何でしょうか。この陀羅尼を教えてください」。
仏は次のように語られた。
「この菩薩の名は観世音自在という。またの名を撚索(ねんさく)、またの名を千光眼という。善き男子よ。この観世音菩薩の不可思議威神力は、すでに過去無量劫の中において仏になっており、その名を正法明如来といったが、大悲願力をもってすべての菩薩を導き、またあらゆる衆生を安楽に成熟させようと願い、そのために菩薩となったのである。あなたがたは、あらゆる菩薩摩訶薩梵天帝釈天龍神をみなまさに仰ぎ敬って、慢心を起こして軽んじることがないようにせよ。すべての人や天は常に供養し、その名を専ら唱えれば、無量の福を得て無量の罪を滅し、命が終る時は阿弥陀仏の国に往生するであろう」。

 

(注:後半に少し入ったが、これ以降は、漢方医学に陀羅尼を呪すことを加えたような内容となるので、これ以降は訳すことはせず、訳はここまでとする。)

 

#大悲心陀羅尼 #大悲呪