大乗経典と論書の現代語訳と解説

経論を通して霊的真理を知る

2020-01-01から1年間の記事一覧

撰時抄 その3

問う:龍樹や天親(てんじん・世親とも言われる。4世紀から5世紀のインドの僧。唯識(ゆいしき)思想の大成者)などの学者の論書に、このことは述べられているのか。 答える:龍樹や天親たちは、心の内には思っていても、説くことはしなかった。 さらに追…

撰時抄 その2

問う:その証拠になる経文などは何であるか。 答える:『法華経』に「私の滅度(めつど・仏が死んでその世界から姿がなくなること)の後の五百年間、この経は広まり、この世において教えは断絶することがないであろう」とある。この経文は『大集経』でいうと…

撰時抄 その1

撰時抄 (注:『撰時抄(せんじしょう)』は、日蓮54歳の著作である。身延において記される。この題名には、今はどのような「時」であるのか、それを「撰(えら)ぶ」という意味がある。) 釈迦の弟子である日蓮が述べる そもそも仏の教えを学ぼうとするな…

寺泊御書 現代語訳と解説

寺泊御書 今月十日(文永8年・1271年)、相州愛京郡依智の郷(現在の神奈川県厚木市)を出発して、武蔵国久目河の宿(現在の東京都東村山市)に着き、十二日間を経て、越後国の寺泊の港に着きました。これから海を渡って佐渡に行こうとしていますが、風…

立正安国論 現代語訳と解説 後半

客人は少し和らいで言った。 おっしゃること、すべて理解したわけではありませんが、ほぼ、その内容はわかりました。しかし、京都から鎌倉に至るまで、仏教界の棟梁とも言うべき中心的な人物がいます。そのような人たちは、誰も幕府に訴えることもせず、朝廷…

立正安国論 現代語訳と解説 前半

立正安国論 客人が来て言った。 このごろ、まさに天変地異が続き、さらに飢饉や疫病が広まっています。 人ばかりか牛や馬までが死んでしまい、その死体は道のあちこちに見られます。 ある人たちは念仏を唱え、または病が治ると信じられている『薬師経』を読…