大乗経典と論書の現代語訳と解説

経論を通して霊的真理を知る

法華玄義 現代語訳  98

『法華玄義』現代語訳  98

 

〇日行天(にちぎょうてん)

次に、日行天は、須弥山の周りを廻っている宮殿に住んでいる。仏教以外の宗教では、日曜、あるいは星宿(しょうしゅく)という。その天は、概略して三十六億あるという。昔、七戒(後の説明あり)を保ち、増上果(ぞうじょうか・戒によって悪を防いだため得られる結果)を得た。風輪(ふうりん・風が常に吹いている空間)によってその位置を保たれている。この日行天などの大天(だいてん)は、二大天である持国天毘沙門天と四天下に遊び、空中に遊戯(ゆうげ)して、五欲の楽を受け、その心のままに楽しむ。日行天は須弥山を廻って、それがどこに位置するかということで、須弥山に影ができ、人はそれを夜としている。風輪は北方の星を保ち、それを回して地平線に沈むことがないようにしている。仏教以外の宗教では、その星を北極星と名付けて、その星が沈まないために、すべての世間や国土が保たれているといい、風輪のためにそのようになっていることを知らない。

七戒のうちの不殺戒(ふせつかい)は四天処に生まれさせ、不殺戒と不盗戒は三十三天に生まれさせ、そこに不婬戒を加えれば、焰摩天(えんまてん)に生まれさせ、さらに不妄語戒・不両舌戒・不悪口戒・不綺語戒を加えれば、兜率天(とそつてん)に生まれさせる。また、不飲酒戒を加えれば、化楽天他化自在天の二つの天に生まれる。保つ戒律が優れたものになればなるほど、天に生まれる功徳が優れたものとなる。また、「心の持戒」と「思考の持戒」が優れたものになればなるほど、福が優れたものとなる。

〇三十三天(さんじゅうさんてん)

三十三天には、文字通り三十三の天があり、それぞれにさまざまな名称がある。いつくかをここにあげると、第一に住善法堂天(じゅうぜんほうどうてん)と名付ける。昔、七戒を堅く保ち、厭う気持ちもなかった。四果(後の段落に説明あり)の位の声聞や、病人、父母、完全な滅に入る禅定を修す人に施し、慈・悲・喜・捨をもって、怖れを抱く者に寿命を与え、善法堂天に生まれて釈迦提婆(しゃかだいば・帝釈天のこと)となる。憍尸迦(きょうしか)という姓を持ち、能天主(のうてんしゅ)とも名付けられる。九十九那由他(なゆた・数えることのできないほど多い数を表す単位)の付き従う天女がいて、互いに心に嫉妬は持っていない。善法堂(帝釈天の住む宮殿の別名)は、広さは五百由旬(ゆじゅん・測ることのできないほど高い高さの単位)である。第三に清浄天・焰摩天とも名付けられる。王を牟修楼陀(むしゅるだ)という。その身長は五由旬であり、百千の帝釈天が力を合わせても及ばない所である。第四に兜率陀(とそつだ)と名付けられる。ここは分別意宮といわれる。その王を刪闘率陀(せんとうそつだ)と名付ける。第五に涅摩地(ねまち・=化楽天)である。ここは自在天ともいわれる。また不憍楽(ふきょうらく)とも名付けられる。第六は波羅尼蜜(はらにみつ)と名付けられる。ここは他化自在天ともいわれる。

以上、三界のうちの欲界の天について述べたが、色界・無色界については記さない。

ここで小の薬草について終わる。