大乗経典と論書の現代語訳と解説

経論を通して霊的真理を知る

法華玄義 現代語訳  06

『法華玄義』現代語訳  06

 

第一部 七番共解

 

序 七番共解の名称

 

五重玄義の通論(注:『法華経』に限らず、他の経典に共通する事柄を論述することであるが、五重玄義の対象が、『法華玄義』では『法華経』に限るので、結果的に通論も『法華経』に限られることとなる)として、七番共解(しちばんぐうげ)を用いる。

七番共解とは、標章(ひょうしょう)、引証(いんしょう)、生起(しょうき)、開合(かいごう)、料簡(りょうけん)、観心(かんじん)、会異(えい)の七つである。

「標章」は、記憶しやすくし、①念心(ねんしん・記憶する心)を起こすためである。「引証」は、仏の言葉によって、②信心(しんじん)を起こするためである。「生起」は、心を乱すことなく、③定心(じょうしん・移り変わるこの世から離れ、禅定に留まっていようとすること)を起こすためである。「開合」と「料簡」と「会異」の三つは、④慧心(えしん・智慧を受け取ろうとすること)を起こすためである。「観心」は、聞いてそれを行(ぎょう)じることにより、⑤精進心(しょうじんしん・努力しようとすること)を起すためである。

そして、この①念心、②信心、③定心、④慧心、⑤精進心の五心(ごしん)が起こるならば、念根(ねんこん・心が悟りを求める方向に常に向かっていること)、信根(しんこん・この世の次元の事柄にではなく、仏の教えを常に信頼していること)、定根(じょうこん・心が常に禅定にあること)、慧根(えこん・智慧を用いること)、精進根(しょうじょうこん・常に努力して行じること)の五根(ごこん)が成就する。

そして、この五根が起これば、欺(ぎ・欺くこと)、怠(たい・怠慢)、瞋(しん・怒り)、恨(こん・恨み)、怨(おん・怨念)の五障(ごしょう・悟りを妨げる五つの障害という意味)」を排除し、念、信、定、慧、進の五力(ごりき)を生じさせ、空解脱門(くうげだつもん・すべては実体がないと見ること)、無作解脱門(むさげだつもん・再びこの世に生まれ変わる業をなくすこと)、無相解脱門(むそうげだつもん・自分を中心とした相対的存在はすべて存在しないと見ること)の三脱門(=三解脱門)に入ることができる。

概略的に七番共解を説明すれば以上の通りである。このように、五重玄義の各項目を詳しく七番共解でよく理解する者は、それぞれ五心、五根を起して、仏の悟りの智慧が開示され、悟りの霊的次元に入ること(注:これを開示悟入(かいじごにゅう)という)ができるのである。