大乗経典と論書の現代語訳と解説

経論を通して霊的真理を知る

2022-01-01から1年間の記事一覧

法華玄義 現代語訳 178

『法華玄義』現代語訳 178 Ⅱ.通教について 次に通教の有門の観法を明らかにするに際して、並べて記せば十の意義(=十乗観法①~⑩)がある。以下、簡単にそれを列挙する。 すべての実在はみな幻が作り出した幻化であると体得し理解する(①観境)。声聞と…

法華玄義 現代語訳 177

『法華玄義』現代語訳 177 第四.破法徧 有を見て道を得ることを成就することは、心を禅定と智慧に安住させることである。五停心の後、共念処(ぐうねんじょ・戒律と禅定の中において智慧を明らかにすること)を修す時は、不浄観などを帯びて、遍くあらゆ…

法華玄義 現代語訳 176

『法華玄義』現代語訳 176 第二項 門に入る観法を示す 門に入る観法について述べるにあたって、二つの項目を立てる。まず概略的に門が通じる場所を示し、次に概略的に門に入る観法を示す。 第一目 概略的に門が通じる場所を示す 通じるところの教えの門は…

法華玄義 現代語訳 175

『法華玄義』現代語訳 175 第四節 実相に入る門を明らかにする 実相は幽玄であり微妙であり、その理法は深い淵のようである。断崖絶壁に登る時、非常に長い梯子を使うように、真実の源に一致しようと願うならば、必ず教えと修行による。このために、教え…

法華玄義 現代語訳 174

『法華玄義』現代語訳 174 第三節 一法の異名 一法(=一実諦)の異名について述べるにあたって、四つの項目を立てる。一つめは、異名を挙げ、二つめは、異名を解釈し、三つめは、喩えによって述べ、四つめは、四随について述べる。 第一項 異名を挙げる …

法華玄義 現代語訳 173

『法華玄義』現代語訳 173 第五項 喩えについて ここで、三つの喩えをもって、体についての正しい見解と誤った見解を明らかにする。そしてそれに兼ねて、開合・破会などの意義についても述べる。 まず、三種の獣がいたとする。その獣たちが河を渡る際、同…

法華玄義 現代語訳 172

『法華玄義』現代語訳 172 第四項 偏った教えについて あらゆる大乗経典において、声聞と縁覚の二乗の人と同じように、方便を帯びて説く者の言葉が記されているが、それは名称が同じであるので、その意義についての解釈は注意して分別しなければならない…

法華玄義 現代語訳 171

『法華玄義』現代語訳 171 第二節 広く誤った解釈をあげる 経典の正しい体は玄妙を絶しており、容易に知ることはできない。また、誤った教えや未熟な教えは、正しく完全な教えを乱す。たとえば、魚の目が真珠の中に入ったら紛らわしくなるようなものであ…

法華玄義 現代語訳 170

『法華玄義』現代語訳 170 第二項 体を述べる意義について そもそも、体を述べる意義とは何か。『大智度論』に、「あらゆる小乗の経典は、もし無常、無我、涅槃の三つの項目をあげて小乗の印とするならば、すなわちそれは仏の教えである。そしてこれにそ…

法華玄義 現代語訳 169

『法華玄義』現代語訳 169 第二章 顕体 第二に「顕体(けんたい)」とは(注:最初の「五重玄義」の項目があげられている箇所では、「弁体(べんたい)」となっていたが、ここでは「顕体」となっているので、それに従う)、前の「釈名」では総合的に説い…

法華玄義 現代語訳 168

『法華玄義』現代語訳 168 第五目 観心をもって経を明らかにする 以上述べてきたことに基づいて、四つの項目(第一は無翻の立場において。第二は有翻の立場において。第三は有翻と無翻を融合する立場において。第四は法を経る立場において)において観心…

法華玄義 現代語訳 167

『法華玄義』現代語訳 167 墨の色が経であることが、法の本とするということは、次の通りである。もし墨の文字において瞋恚を生じれば、他者の寿命を断じる。もし墨の文字において愛(注:あくまでも仏教的意味で執着のこと)を起こして、盗みや姦淫をし…

法華玄義 現代語訳 166

『法華玄義』現代語訳 166 第四目 法によって経を明らかにする もし経という言葉を正しい翻訳の言葉とするならば、どのような法が経なのであろうか。古い解釈に三種ある。一つめは、声をもって経とする。仏は世にあって、尊い金口(こんく)をもって教え…

法華玄義 現代語訳 165

『法華玄義』現代語訳 165 第二目 有翻を明らかにする 第二に、翻訳する言葉があることについて、五つの項目を立てる。 一つめは、翻訳して「経」とすることである。経とは、経由(けいゆ)の意味である。聖人の心と口を経由するからである。さらにまた、…

法華玄義 現代語訳 164

『法華玄義』現代語訳 164 ②発せられる過程 ②.a.教の本 仏は四悉檀をもって説いたが、言辞(ごんじ)が巧みであって、次第に多くの意義を語り、最初、中頃、最後もすべて良く、円満具足することは、海の水が陸から次第に深くなっていくようなものであ…

法華玄義 現代語訳 163

『法華玄義』現代語訳 163 第五項 経について述べる これまで述べた釈名における「法」「妙」「蓮華」の名称の解釈は、『妙法蓮華経』に限られたことであるので、「別名(べつみょう)」の解釈であり、次に述べる「経」の一文字は、他の経典にも共通する…

法華玄義 現代語訳 162

『法華玄義』現代語訳 162 〇蓮華をもって行妙を喩える 蓮華の種は小さいといっても、その中に根、茎、花、葉が備わっていることは行妙を喩える。茎は慈悲、葉は智慧、しべは三昧、花が開くことは解脱である。また葉は三つの慈悲を喩えるが、まず、水を覆…

法華玄義 現代語訳 161

『法華玄義』現代語訳 161 〇蓮華をもって十如是の境を喩える(①~⑩) ①たとえば、硬い蓮の実のようである。黒いことは染めがたいことを意味し、硬ければ壊れにくい。四角でもなく丸くもなく、生まれもせず滅びもせず、劫初には種もないために生じること…

法華玄義 現代語訳 160

『法華玄義』現代語訳 160 第四目 正しく解釈する もし『大集経』によるならば、修行の法の因果を蓮華とし、菩薩が蓮華の上に坐ることは因の花であり、仏の蓮華を礼拝することは果の花である。もし『法華論』によるならば、その住む所の国土を蓮華とする…

法華玄義 現代語訳 159

『法華玄義』現代語訳 159 第四項 蓮華について述べる 蓮華について述べるにあたって、四つの項目を立てる。一つめは、法譬を定める。二つめは、旧釈を引用する。三つめは、経論を引用する。四つめは、正しく解釈する。 第一目 法譬を定める 権実は顕われ…

法華玄義 現代語訳 158

『法華玄義』現代語訳 158 ⑨.利益 本門の十妙の解釈における第九は、利益である。先に生身(しょうしん・この世に現われた身)の利益を明らかにし、次に法身の利益を明らかにする。生身は迹門と本門の両方に利益を得る。迹門に会三帰一し、開権顕実して…

法華玄義 現代語訳 157

『法華玄義』現代語訳 157 ⑥.料簡 本門の十妙の解釈における第六は、料簡である。過去・現在・未来の三世について考察する。『法華経』に「如来の自在な神通力と、如来の大いなる勢いと威厳の力と、如来の獅子奮迅の力」とあるのは、すなわちこれは三世…

法華玄義 現代語訳 156

『法華玄義』現代語訳 156 (7)本眷属妙 『法華経』に「このあらゆる菩薩は、下方の空中に住む。彼らは私の子、私はすなわち父である」とある。「下方」とは、下を底とする。『大品般若経』に「諸法底三昧(しょほうていざんまい)」について記されてい…

法華玄義 現代語訳 155

『法華玄義』現代語訳 155 (3)本国土妙 『法華経』に「それ以来、私は常にこの娑婆世界にいて、説法教化し、また他の国においても衆生を導き利益を与えた」とある。この娑婆とはすなわち本時の凡聖同居土である。「他の国」とはすなわち本時の方便有余…

法華玄義 現代語訳 154

『法華玄義』現代語訳 154 ⑤.広釈 本門の十妙の解釈における第五は、広釈である。本門の十妙の各項目について詳しく述べる。本がなければ迹が下されることはない。もし、よく迹を理解すれば、すなわちまた本も知る。しかしまだ理解できない者のために、…

法華玄義 現代語訳 153

『法華玄義』現代語訳 153 B.本門の十妙について 第二に、本門の十妙とは、本因妙・本果妙・本国土妙・本感応妙・本神通妙・本説法妙・本眷属妙・本涅槃妙・本寿命妙・本利益妙の十種類である。 そして、この本門の十妙の解釈において、また十の項目を…

法華玄義 現代語訳 152

『法華玄義』現代語訳 152 Ⅱ.本門の十妙 妙について詳しく述べるにあたっての第二は、本門における十妙を明らかにすることである。ここで二つある。第一に、本と迹について解釈し、第二に、本門の十妙を明らかにする。 A.本と迹について そもそも、次…

法華玄義 現代語訳 151

『法華玄義』現代語訳 151 d.観心の利益について明らかにする 小乗は、心に生じたことでも、まだ身も口も動いていなければ、業とはしないことが明らかである。しかし、大乗は、一瞬の罪を作ることでも、それによって無間地獄に堕ちることを明らかにする…

法華玄義 現代語訳 150

『法華玄義』現代語訳 150 c.流通の利益について明らかにする 功徳利益妙について述べるにあたっての三つめは、「流通(るつう・教えが広められること)の利益について明らかにする」である。ここにおいて三つの項目を立てる。一つめは、師を出す、二つ…

法華玄義 現代語訳 149

『法華玄義』現代語訳 149 第二.近益近益を論じる 近益(ごんやく)とは、仏が悟りを開く寂滅道場に赴き、初めて悟りを成就して、教えを説き、生死の苦を減らす毒の太鼓と、道を増し加える天の太鼓を打って、衆生に利益を与え、『法華経』が説かれる直前…